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2020
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子どものために連携を 愛媛・児童虐待防止研修会報告

<下>目黒虐待死事件被害女児の元主治医 木下さんに聞く

2020年3月5日(木)(愛媛新聞)

「子どもの幸せを最優先に考え、子どもの立場になって判断することが虐待対応では大事」と語る木下あゆみ医師

「子どもの幸せを最優先に考え、子どもの立場になって判断することが虐待対応では大事」と語る木下あゆみ医師

 児童虐待防止の多機関連携などをテーマにした研修会(県医師会主催)がこのほど松山市内であり、東京都目黒区の虐待死事件の被害者船戸結愛ちゃん=当時(5)=の主治医をしていた木下あゆみ医師(香川県)が登壇して「各機関が自分の仕事ではないと言い始めると子どもが連携の隙間に落ちて死んでしまう。隙間を埋める努力をしよう」と訴えた。木下医師に虐待死の防止策を聞いた。

 

 ―国立病院機構「四国こどもとおとなの医療センター」(香川県)で結愛ちゃんの主治医になった経緯は。

 児童相談所と協議し、2回目の一時保護解除の際、通院などを条件とした。週に1、2回、母親と1~2時間話し、スタッフらが結愛ちゃんと遊んで様子を見守った。父親には残念ながら関われていない。

 約5カ月半後、母親は「夏休みに来ます」と言い残して東京へ転居。住所は教えてくれなかった。転居先の児相が面会できていないのを知り、当院から電話で「早めに見に行ってほしい」と頼んだが、転居から39日後に結愛ちゃんは死んでしまった。

 悔しかった。危機感を持って対応してきたし、今思えば足りない点もたくさんあったが、当院だけでなく児相、県警など香川県の関係機関もそれなりに関わっていた。子どものはかなさを、連携に少しでも隙間があると死んでしまうことを強く実感した。

 

 ―虐待の背景には何があるのか。

 虐待は多様な要因が重なって起きる。もちろん親は悪いのだが、親なりに理由がある。結愛ちゃんの事件でも夫から妻へのモラルハラスメント、転居による社会的孤立があった。子どもはもちろん被害者だが、育てにくかったり病気がちだったりすると親のストレスになり得る。親に被虐待体験があると、子どもの育て方が分からずに虐待してしまうということもある。

 要因を一つでも取り除けば虐待せずに済むかもしれない。虐待したくてしているケースはそうそうない。どうすればいいのか分からず手が出るということがある。そうした親が子どもを産み育てる難しさを理解しないと支援は難しい。単に子どもを保護し、親を罰すればいいという問題ではない。どんなフォローが必要か、制度をどう変えるべきか考えないといけない。

 

 ―虐待死を防ぐ手だては。

 同じあざでも重症度の判断が医療機関と他機関では違うことが多い。危機感が他機関に伝わらないことがよくある。医学的知識が少ない中、児相が初期対応の際、子どもの心身の状態を判断している。事件後に国会議員の勉強会で問題点を訴えた。児相への医師、保健師の配置義務化を盛り込んだ改正児童福祉法の成立につながったと思う。

 今後は、医師がもっと虐待対応や家族支援に関わる仕組みを整えることや、児相職員の専門性向上、待遇改善も必要。

 

 ―虐待対応における多機関連携のポイントは。

 どんな親でも虐待は起こり得る。子どもも親もきっとSOSを出しており、早期介入が大切。「様子をみる」という言葉は居心地がいいが、その間にも子どもは危険にさらされているかもしれない。実際に結愛ちゃんは死んでしまった。

 子どもの幸せを第一とすること。各職種が専門性を高めた上でのりしろを広げ、隙間を埋める努力をする。自分の仕事かどうかを考えるのではなく、アンテナを張り巡らせて「おせっかいでいよう」と言い続けている。愛媛県でも児童虐待防止医療ネットワーク事業が始まると聞いており、さらなる連携強化につながるはず。隣県として共に頑張っていければと思う。

 

 【目黒女児虐待死事件】 2018年3月2日、東京都目黒区のアパートから救急搬送された船戸結愛ちゃん=当時(5)=が病院で死亡。警視庁は翌日、傷害容疑で父親を逮捕した。6月に保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕する際、母親も逮捕。結愛ちゃんが「もうおねがい ゆるして」とノートに書き残していたことを明らかにした。厚生労働省の専門委員会は10月、転居に伴い、香川県と都の児童相談所間の引き継ぎで危険性が十分に伝わらなかったとする報告書をまとめた。

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