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生涯スポーツ特集in愛媛

伴走で思い切り走る快感 陸上競技 佐伯裕弓さん (42)

2020年11月19日(木)(愛媛新聞ONLINE)

 

 子どもの頃から運動が好きでスポーツ少年団に所属し陸上やミニバスケットボールなどに親しんでいた佐伯裕弓さん(42)=松山市。小学3年生で異変が起きた。視界がぼやけ始める原因不明の異常が続き、5年生で目を手術して以降、体を動かすことから遠ざかっていた。

 大学卒業後、作業療法士として働いていたがマッサージ師の資格を取るため25歳で松山盲学校に入学。学校の陸上大会で800m走に出場し、誰にも遠慮することなく自由に走れる快感を思い出した。

 

 

 29歳で盲学校の先輩だった幸男さん(50)と結婚。夫婦で営む鍼灸(しんきゅう)院での施術や育児に忙しい日々を送った。34歳で両目を再手術。視力が徐々に低下する中、幸男さんに誘われ2017年、障がい者の陸上競技チーム「愛アスリートクラブ」に入会した。同年、愛媛で開かれた全国障害者スポーツ大会に出場し200mで4位、本命の50mは台風で中止に。メダルに届かなかった悔しさから一層奮起し、種目を1500mに変え本格的に陸上に向き合った。

 クラブの練習会には月2回参加。息子2人も参加しており「頑張っている姿に励まされる」。練習会では毎回目標を立て、それまでに自主練習で鍛錬を積む。家族や練習仲間と目標達成や記録更新を喜んだり評価し合ったりして、自信が付いたという。

 9月13日の県障がい者陸上競技チャレンジ記録会では、初の伴走付きで1500mのレースに。数年前に右目が失明し、左目の見える範囲も「トイレットペーパーの芯の穴からのぞくようなもの」という佐伯さんにとって、伴走は長年希望していたパートナー。伴走者と一緒に持つひもに、2時間かけて「愛アスリートクラブ」と刺繍し気合十分で挑んだ。

 

 

 ペアを組む愛媛銀行陸上部の沖村美夏選手(23)と勢いよく飛び出したが、スタート直後に佐伯さんが転倒。すぐ立ち上がり、次々にランナーを追い抜き1着でゴールした。目標タイムにはわずかに及ばなかったが、自己ベストを4秒更新した。

 「伴走で心が大きくなって、いけると思ったけど…。こけなかったら(目標タイムが)出せたと思う。でもこれも実力のうち」とすがすがしい表情。沖村選手は「佐伯さんから走るのが好きな気持ちが伝わってきて、自分もこんなに好きだと改めて気付けた。また機会があれば一緒に走りたい」と強い絆が生まれた。

 佐伯さんは「見えなくなったら走るのをやめようと思っていたけど、伴走でこれだけ思い切り走れるんだと希望が持てた。クラブの仲間や家族との絆を大切に走り続けたい」とさらなる挑戦に胸を躍らせている。

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