体調急変し病院搬送も
県内コロナ 宿泊療養施設利用増 軽症者対象も不測事態懸念
2021年1月17日(日)(愛媛新聞)
【体温・酸素飽和度 1日3回電話聴取】
新型コロナウイルスの急速な感染拡大により、医療態勢の負荷の高まりが懸念されている。県内では感染者の症状や生活環境に応じて宿泊療養施設を活用するほか、自宅で療養するケースも増えている。昨年4月の宿泊療養施設の稼働当初から運営に携わる愛媛大医学部附属病院の田内久道・感染制御部長は「患者数が増えるほど(第1波の)昨春なら入院だった人がホテル、ホテルだった人が自宅になり、不測の事態が起こるリスクが上がる」と指摘。これ以上の感染拡大を防ぐため「この2週間はステイホームを意識してほしい」と訴える。
県は昨年4月から軽症・無症状者用の宿泊療養施設として松山市のホテル1カ所を借り上げた。同11月の感染者急増を受け、主に無症状者のため、市内のホテル1カ所を追加して計142室を確保し、自宅療養も開始した。
県や医療関係者によると、陽性が確認された場合、症状の程度や年齢、基礎疾患などのリスクを鑑み、療養先を決定。軽い症状がある人や、自宅に高齢者らがいて療養が難しい人などは宿泊療養施設を活用し症状や生活環境、希望に応じて自宅療養になる人もいる。現在、県内の入院患者は最大レベルの60人を超える状況が続くものの、県は「松山圏域を中心に厳しい状態だが、必要性のある人は全て入院できている」と説明する。
1カ所目の宿泊療養施設で対応を続ける田内医師によると、入所時には医師が症状を見極める。新型コロナの病態の説明や薬の処方などで受け入れには1人30分~1時間を要し「施設での他の業務を考えれば対応できるのは1日当たり4~6人程度。一気に何十人もは難しい」とする。
運営には、人手不足のため募集に応じた潜在看護師らが加わり1日に3回、感染者から電話で体温や酸素飽和度を聞き取り、体調の変化を見守る。急変時には医師が24時間態勢で駆けつける構えだが、田内医師は「昨年11月以降、体調が悪化して病院に搬送するケースが出てきた」と懸念する。
入所時に歩き方がおかしいと注視していたら急変したり、本人が大丈夫だと言っても数値を見て部屋を訪れると起き上がるのも苦しい状態だったり―。昨年4月からの第1波で緊急搬送した例はないといい「以前なら念のために入院していたような人も病床が埋まればそうはいかない。命を守るため、これ以上、感染者を増やさないことが必要」と強調する。体調の急変は主に50代以上で、無症状の若い世代は自宅療養も可能とし「自宅での生活というお願いを守って療養してほしい」と呼び掛ける。
年末年始の感染者数の増加を踏まえ「街中にいるウイルスの量は明らかに増え、感染リスクが高まっている」と語る田内医師。感染者からウイルスが排出されるのは10日間と考えられるため「2週間すればフェーズは変わり、今後の方向性が見えてくる。何とか頑張って対策に努めてほしい」と理解を求めている。
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