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愛媛出版文化賞 受賞者に聞く

<7>奨励賞/第2部門 美術 「石鎚山に抱かれて」(アトラス出版) 一色龍太郎著

2021年1月18日(月)(愛媛新聞)

「山の中に豊かに栄えた集落があったことを知ってもらいたい」と話す一色龍太郎さん

「山の中に豊かに栄えた集落があったことを知ってもらいたい」と話す一色龍太郎さん

【山での暮らしに焦点 先人の息遣い カメラに】

 

 高校時代に登山の魅力に取りつかれて以来、幾度となく石鎚山系や周辺の集落に足を運び、シャッターを切ってきた西条市三津屋の写真家・一色龍太郎さん(69)。風光明媚(めいび)な風景でなく、そこに暮らす人々や風習、建物などにレンズを向け、山での暮らしに焦点を合わせた190点をまとめた。人口減少と過疎化が進む西条の中山間地域。人々が生き、生活していた記録を残さなければ―。カメラを携え、足取り軽く山へ向かう。

 

 10代のころ、登山で通りかかった山中には、民家や商店もあり、にぎわっていた集落もあった。そうした光景が失われつつある中、営む写真スタジオの業務を長男に任せて時間に余裕ができ始めた60歳ごろから、本格的に撮影を始めた。

 

 旧大保木村、旧石鎚村などの集落で出会った高齢者らから話を聞いて地域の歴史も掘り下げ、当時は網の目のように山中に張り巡らされていた「生活道」を探し出し、先人の息遣いをカメラに収めた。

 

 出版後、かつての集落の住民らから「懐かしかった」「私らの知らんことまで書いて教えてくれてありがとう」との手紙ももらい「喜んでくれる人がいてよかった」と相好を崩す。

 

 最後の一人が山を下りて町中で暮らし始め、無人になった集落もあるという。「そこに集落があったことを忘れてくれるなとの思いを持っている人がいる」と一色さん。その人たちのためにも記録を残そうと、仕事で培った技術を生かし、「老後のライフワーク」として取り組んできた。

 

 原動力には、好奇心や登山への愛もある。「その先に何があるか分からん山道は面白いんよ」と話す一色さんの山行は、今後も続きそうだ。

 

    真相追求 みんなの特報班

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