東京パラリンピック
高校生と稽古 夫婦に力 広瀬悠 広瀬順子 柔道
2021年8月17日(火)(愛媛新聞)
視覚障害者柔道の広瀬夫妻は2020年7月から松山工高を練習拠点としている。部員とともに稽古に励み、ここで過ごす時間が新型コロナウイルス禍に直面した2人が前に進む力になった。
20年3月に東京大会の1年延期が決定。当時は感染対策のため打ち込みや乱取りができず、走ったり、ジムや自宅でトレーニングしたりすることしか選択肢がなかった。意欲的に取り組めない時期もあったが、少しずつ従来の練習ができるようになり、松山工高で汗を流し始めると、さらに気持ちは前を向いた。
「高校生は自分たちの大会が中止や延期になっても、柔道が好きで、許される限りの練習をしていた。勇気づけられた」と悠(42)。順子(30)も「生徒がいつも明るいので、柔道がうまくいかず落ち込んでいるときも励まされ、力をもらっている」と感謝する。
選手としての強化にもつながっている。順子は男子高校生の技を受けることで守りが鍛えられた。技の指導を求められることの多い悠は「自分が本当にその技ができないと教えられない」と自らの技量を見つめ直す機会になっている。
夫婦そろっての大舞台。順子が「5年間頑張った結果がメダルにつながればいい」と目標を語れば、悠は「応援してくれる人に一試合でも多く試合を見せられたら」と気負わずにいる。(和泉太)
【ひろせ・はるか】 松山市出身。90キロ級。小学2年で柔道を始め、宇和島東高時代にインターハイ出場。パラリンピックは2008年北京大会に初出場し、3位決定戦で敗れ、メダルを逃した。SMBC日興証券。
【ひろせ・じゅんこ】 山口市出身。57キロ級。2016年リオデジャネイロ大会で3位になり、日本女子柔道初のメダルを獲得。18年のワールドカップで世界大会を初めて制した。得意技は一本背負いなど。SMBC日興証券。