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四国でココだけ!ロボット図書館 西条図書館「自動化書庫」に潜入

 ロボットが本を探し、目の前まで運んでくれる。しかも、正確に、スピーディーに。約40万冊の蔵書を誇る西条図書館(西条市大町)は、少し前なら夢物語でしかなかったような設備を備える。2009年の開館当初から四国で唯一、ロボットが資料を管理する「自動化書庫」を有していたが、これまでその実態が広く知られることはなかった。

 「読書の秋」を迎えた9月、図書館から特別に許可を得て、関係者以外では初めて自動化書庫に潜入した。一体どんなロボットなのか。西条図書館の裏側に迫った。

■暗闇に包まれた西条図書館の裏側■

 西条図書館の蔵書約40万冊のうち、誰でも自由に手に取れるのは、フロアの本棚「開架」に並んでいる約19万冊にとどまる。残りの約21万冊は、閲覧スペース確保のため、一般利用者は入れない「閉架」の自動化書庫で保管している。

 

2009年に開館した西条図書館。蔵書は約40万冊

西条図書館2階の平面図。受付裏側に自動化書庫(赤枠)はある

 2階の受付裏側にある自動化書庫に入ると、天井まで達する棚がずらり。5千個余りのコンテナが規則正しく並び、中では大きさごとに分類された本が静かに出番を待っていた。
 機械の稼働中に人が立ち入るのは危険だ。カメラを設置してその場を離れ、1階の受付から自動化書庫内の本「西条市防災100年誌」の貸し出しをお願いした。

 

360度カメラで見るロボット図書館(ドラッグで動かせます)

 シュイーーーーン。カッチャン。シュイーーーーン―。映像を確認すると、棚の間に敷かれたレールを、高さ4メートルを超す黒いロボットが勢いよく滑ってきた。さすがに二足歩行のロボットが走り回るわけではないが、ある棚の前でピタリと止まり、コンテナを器用に引っ張り出して持って行く。
 コンテナはベルトコンベヤーや専用エレベーターを経て、1階受付に到着。職員がコンテナ内の数十冊の本の中から、依頼した1冊を取り出した。出庫指示から、わずか2分10秒の出来事だった。

 毎日15冊ほどを運ぶという自動化書庫。今回は撮影のため、照明をつけたが、普段は真っ暗闇の中、ロボットが赤外線を頼りに黙々とコンテナを運んでいるそうだ。

 

ロボットは目的の本がどのコンテナに入っているのか正確に把握している

ロボットが棚に並ぶコンテナをつかんで運んでいく

ロボットが書庫から受付まで本を届けてくれる。その間2~3分

■ベテラン司書VSロボット■

 では、ロボットと人間では、どちらが早く本を出せるのだろうか。市内2番目の規模の東予図書館(西条市周布)で、西条図書館と同じ本の貸し出しを依頼した。約4万4千冊ある閉架書庫から探し出すのは、副館長の佐々木瑞恵さん(56)。司書歴35年のベテランだ。

 

ベテラン司書VSロボット。どちらが早いのか!?

 依頼を受けると、佐々木さんはエレベーターで2階に上がり、書庫に突入した。可動式本棚のハンドルを回してずらりと並ぶ棚を動かし、通路を確保。一切の迷いなく「郷土資料」の棚の前に立った。
 眼鏡を装着し、気合を入れる佐々木さん。本の背表紙を素早く確認していく。「はい」。スッと1冊の本を抜き取り、1階受付に戻ってきた。そのタイム、なんと1分47秒。蔵書規模こそ異なるが、自動化書庫より早かった。

■正確性のロボット、柔軟性の人間■

 勝利を収め「まあ慣れですよ」と謙遜した佐々木さん。「今回は探しやすかった。実際、探す本によります」と解説を始めた。
 東予図書館では「哲学」「歴史」「自然科学」など日本十進分類法に基づき、本に番号を付けて整理している。しかし、同じ分類番号の本が多いジャンルでは、100冊以上の背表紙を確認することもあり、長ければ5分程度を要するという。「いくら探しても見つけられず、もう1人が書庫に行って、ようやく発見できることもあります」と明かす。

 

東予図書館の閉架では本棚にラベルを貼って本を探しやすくしている

 西条図書館の自動化書庫のシステムは、約21万冊の本全てが、5千個以上あるコンテナのどれに入っているのかを把握している。正確さでは、自動化書庫が優勢か。

 しかし「自動化書庫は1冊ずつしか取り出せないけど、人間は、1回で複数冊を探して持ってくることもできますよ」と強みを挙げる佐々木さん。「自動化書庫はないけど、スタッフが一生懸命頑張るので、東予図書館もぜひ利用してください」と笑う。

 

約14万冊の蔵書で西条市内2番目の規模の東予図書館

■自動化書庫がゆったり空間を実現■

 そもそも、なぜ西条図書館に自動化書庫が導入されたのか。謎を解いてくれたのは、1級建築士の資格を持つ市の技術職員として、図書館整備に携わった徳増靖記さん(66)。話を聞くと「滞在型図書館」というコンセプトが浮かび上がってきた。

 

市の技術職員として、図書館整備に携わった徳増さん

 徳増さんや図書館提供の資料によると、市は当初、可動式の本棚を導入して全約40万冊を来館者が手に取れるよう計画していた。用地の広さが限られる中、資料の数を確保しつつ、閲覧のための広々とした空間を設けるためだった。

 

東予図書館の閉架では限られたスペースに多くの本を収納するため、可動式の本棚が採用されている

 ただ「(可動式本棚に)利用者が挟まれる危険がある」との懸念が上がり断念。安全面とコンセプトを両立する手段として、新たに浮上したのが自動化書庫だった。資料探しの効率化や、省スペースなどにつながったほか「安全面の問題もクリアされました」(徳増さん)。

 館内を歩くと、本棚と本棚の間の通路は人がすれ違っても余裕があり、各所に設けられたテーブルや椅子では、ゆったりと資料を見られる。学習室や会議室を備えるなど市民の知の拠点として充実しており「限られた予算や面積の中で、圧迫感のない空間が実現できているのは収納効率の高い自動化書庫のおかげだと思います」と徳増さんは力を込める。

 図書館によると、約19万冊を収める開架部分の面積は1623平方メートル。一方で、自動化書庫は天井までの高さを生かし、わずか6分の1の263平方メートルに約21万冊を収容している。

 

開架の本棚の間隔も広く、ゆったりとした空間が実現している

■デジタル化や働き方改革を先取り■

 開館当初から西条図書館に勤務する副館長の安藤文昭さん(45)は、職員の立場から自動化書庫の有用性を説明する。「職員の労働時間短縮や業務のデジタル化の必要性が叫ばれる今、09年の段階でこのシステムが導入されていて、本当によかったと感じています」

 

自動化書庫を活用し、市民サービス向上を目指す安藤さん

 開架では、利用者が戻す場所を間違えて、本が「迷子」になることがある。西条図書館は「迷子」捜しを含めた施設点検のため、年末に7日間程度休館する。しかし「7日間で済んでいるのは、40万冊のうち約半分の21万冊が、自動化書庫で完璧に管理されているからです」(安藤さん)。市民サービス低下に直結する休館日を減らすことにも貢献しているそうだ。

 導入に約1億4200万円、メンテナンスで年200万円余りの経費が生じる自動化書庫には「こんなに立派なものが必要なのかという市民の声もあります」と安藤さん。ただ、せっかくあるものは「市民の財産」としてしっかり活用し続けたい。「書庫内の本の特集を組んで提案すれば、利用者が選びやすくなるのではないか」と新たなアイデアも検討中だ。

 

西条図書館ではテーマを設けた特集を組んでいる。自動化書庫内の本でもできないか思案中だという

 図書館の暗闇で、いつも人知れず本を運んでいたロボット。初めて当たったスポットライトを、少しは喜んでくれているだろうか。(森岡岳夢)

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