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26日まで開催

秋の県展 前期の作品紹介 日本画・彫刻・工芸・書道

2021年10月22日(金)(愛媛新聞)

 第70回秋季県展(県美術会、愛媛新聞社など主催)の前期展(日本画・彫刻・工芸・書道)が26日まで、松山市堀之内の県美術館南館で開かれている。各分野の団体による審査評をもとに見どころを紹介する。

 

永井英子「ツェルマット(スイス)」

永井英子「ツェルマット(スイス)」

永井英子「ツェルマット(スイス)」

永井英子「ツェルマット(スイス)」

[日本画]

 

【空気感や構成に安定感】

 

 総数101点(前年比6点減)で、若い層の減少が一因か。デジタル化の中、日本画の手仕事は価値ある表現手段だが、社会の変化にわれわれも敏感であるべきだと思う。

 

 会員優賞は村橋清香「メリーゴーランド」。会員のレベルの差はなく、決定議論は白熱したが、隅々まで丁寧な制作で、色彩も構成も意図がよく伝わる。70周年記念会員賞の星川貞栄「歴」は、かつての栄華の虚無感を静かに語りかける空気感の表現が評価された。

 

 準会員賞は、魚部千鶴「水鏡」と永野なおみ「ぶどう」。「水鏡」は中心部に少しの青空を配したところが奏功。「ぶどう」は縦長の水墨画で濃淡を巧みに使い、構成にも優れる。

 

 70周年記念県美術会大賞の永井英子「ツェルマット(スイス)」は、山村の空気感も構成も安心・安定感があり、爽やかさも目を引いた。

 

村山拓人「Blackbird飛び立つ時」

村山拓人「Blackbird飛び立つ時」

村山拓人「Blackbird飛び立つ時」

村山拓人「Blackbird飛び立つ時」

[彫刻]

 

【鳥の迫力と存在感 圧倒】

 

 出品は17点(前年比4点減)だった。

 

 会員優賞はDrill―masumoto「ハナレルコトモナイ」。単純な形の中に柔らかさや優しさといった空気が流れている。作者のアイデアやイマジネーションの世界を謎解きの感覚で楽しむ方法もある。

 

 70周年記念県美術会大賞は村山拓人「Blackbird飛び立つ時」。鉄の作品で、会場に入った瞬間に、鳥が目に飛び込んでくる迫力と存在感に圧倒される。

 

 特選の仙波力男「孟宗竹根蛙の四つ相撲」は、鳥獣戯画のような作品。竹の根の部分による質感の違いをうまく使い、ユーモラスなカエルの面白さが表れた。

 

 創作で最も大切なのは、形を作ることだけでなく、いかに想(おも)いを作品に込めるか。制作意欲を持ち続け、完成させた作品を見てもらう点で、県展は大切な場。新人の登場を期待したい。

 

森下由規子「花に纏う光と雫」

森下由規子「花に纏う光と雫」

森下由規子「花に纏う光と雫」

森下由規子「花に纏う光と雫」

[工芸]

 

【三者 着物の全面で遊ぶ】

 

 一般出品数は47点。うち入選は35点(入選率74・4%)と厳しい結果。展示総数は会員を含め63点。

 

 70周年記念会員賞は、山田ひろみ「秋海棠花瓶」。ブラッシング技法による色の濃淡を付けた紋様で白磁の白を生かした秀作。70周年記念県美術会大賞の森下由規子「花に纏う光と雫」は、灰汁建て(あくだて)の藍で染めた絣(かすり)織りの作品。タイトルの三者がコロコロと着物の全面で遊んでいるさまが感じられる。

 

 特選は3点。大西重文「四神器」は、細やかな細工の墨壺。大工道具として忘れられないとの意図もあるよう。濱家さくら「籠魚恋雲」は多面体の均整のよい花器で、柄の配置のバランスが良く、形とマッチした。檜垣孝二「古代のいのち」は、大胆さの中に優しさと躍動感が感じられる銅板レリーフ。

 

 ほかに染色、織り、切り絵など労作がある。

 

阿部碧城「王漁洋詩」

阿部碧城「王漁洋詩」

阿部碧城「王漁洋詩」

阿部碧城「王漁洋詩」

[書道]

 

【巧みな造形で多様な美】

 

 新型コロナウイルス禍で意気が減退しがちな中、出品者の気力に敬意と称賛を惜しまない。総出品数は772点。うち一般は447点で354点が入賞(入選率79・2%)。漢字多字数を筆頭に仮名、大字書、篆刻(てんこく)、前衛書と多岐にわたる。

 

 会員優賞は3点。平田琴景「釣天曲」は、滞ることのない連綿の妙と力強いリズムが魅力。仙波香苑「王維詩」は、変化に富んだ文字群が配置された充実の作。矢部麗月「藤原基俊歌」は仮名の流麗さと行の変化が美しい。

 

 70周年記念会員賞も3点。谷川美仙「派」は重厚な線が白を輝かせた。内田玉春「趙孟頫詩」は、のびやかな線が縦横に活動する。村上扇舟「劉秉忠詩」は、変化に富む文字群が関わり合いつつ美しい行を創る。

 

 70周年記念県美術会大賞の阿部碧城「王漁洋詩」は、巧みな造形が多様な美を表現した。

 

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