
【1月17日更新】ちょうちん行列を再び、追う 謎多き愛媛の伝統行事
松山市を中心に行われる秋祭り行事「ちょうちん行列」の謎に迫った愛媛新聞ONLINE限定記事に対して、多くの体験談や掛け声情報が寄せられた。松山東高校の1、2年生にも協力を依頼し、全部で50件以上の情報が集まった。中には、幼少期を思い出し、県外からメールを送ってくれた出身者も複数いた。この場を借りて、情報提供をしていただいた皆さまに御礼申し上げます。(※前回記事未読の方は、そちらを先に読むと、より一層この記事を楽しめます)
情報からは、前回の取材時には把握できていなかった風習が浮かび、提供者も由来を知らない不思議な掛け声もあった。県歴史文化博物館(西予市)の大本敬久専門学芸員を「水先案内人」に、一つ一つの体験談から見えてきたちょうちん行列の過去と今、そして未来とは―。(竹下世成)
※【12月20日】本記事投稿後も、情報提供いただきありがとうございます。中段の地図を更新してまいりますので、ご協力よろしくお願いいたします。
取材のきっかけは社内の雑談。秋祭りの時季が徐々に近づく中、話題はちょうちん行列に。「(松山の)和気では『ウォー、エイ』って走り回っているよ」。古川地区で生まれ育った私にとって、ちょうちん行列といえば「もーてーこい」と歩いて各戸を訪ねる行事。果たして本当に同じちょうちん行列なのか。それとも、いくつもの種類が存在するのだろうか。
実は、ちょうちん行列の詳細な調査は行われたことがないそうだ。自治会などが実施しているため、神社も実態を把握していないことが分かった。前回の記事では、確認できた掛け声をまとめて地図に落とし込み、情報提供を呼び掛けた。
集まった掛け声を分類すると、「もてこい系」(16件)と「わっしょい系」(13件)で半数以上を占めた。
大本さんによると、「もてこい」は「詣でる」や「もう出てこい」から派生した可能性がある。長崎市の大祭「長崎くんち」でも使われるなど西日本に点在する。その反対に、東日本が発祥とされるのが標準語の「わっしょい」だ。少数派の「ちょうさ」は新居浜の太鼓台やみこしを運行する際の掛け声で、瀬戸内海沿岸一帯に見られる。山越町などで使用されている「やーおい」は子どもが何かをする際の掛け声としては一般的だそうだ。
掛け声としては新しい順に「わっしょい」「もてこい」「ちょうさ・やーおい」になるとされる。掛け声が複雑になればなるほど古くから続いている可能性もあるそうで「それぞれの地域でちょうちん行列を始めたころにはやっていた掛け声が残っているのではないでしょうか」。
地図上に分類すると「もてこい系」は重信川流域で広まっている。また、北条地域と中島地域では、北条地域の善応寺を除き、ほとんどちょうちん行列が行われていない。両地域には、ちょうちん行列の代わりに、みこしのお供を務めるだんじりが残っており「今の松山市が民俗文化的には一つではないことがあらためてよく分かる結果です」と話す。
「もてこい系」「わっしょい系」「やーおい系」と系統で記載したが、同じ系統でもリズムや言い回しは異なる。「もてこい系」には、以下の5種類の回答があった。
・もてこい
・もーてーこい
・もーてーこーい
・もてこーい
・もってこい
また、その後に続く言葉はさらに細分化される。
久保田町では「みんなーこい」、市外では松前町東古泉はリズムを変えてもう一度「もてこい」と声をそろえる。古川の「この家繁盛せえ」は「亥(い)の子」の影響があるとみられる。そして、最も独特だったのは1990年代の南斎院町だ。