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2022
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色麺300年! 愛媛の夏の味・五色そうめんの覚悟

 

自身の性格を「いい加減」と称する矢田社長

自身の性格を「いい加減」と称する矢田社長

 

自身の性格を「いい加減」と称する矢田社長

自身の性格を「いい加減」と称する矢田社長

 

 「じゃ、回りました。よーい、スタート!」。少し汗ばむ陽気となった4月下旬、松山市居相2丁目の伊予豆比古命神社(椿神社)に砥部町出身の映画監督・大森研一さんの声が響く。レンズの先にはお笑いタレントの友近さん=松山市出身。神妙そうな表情で回廊の柱に体重を預けて立っている。「はい、オッケーです」。大森監督の呼びかけまで、現場は独特の緊張感に包まれていた。
 それから、さかのぼること約5分。大森監督がカメラを向ける先に、友近さんと同じ場所に立ってポーズを決める人影が。白いボディーに5色のラインが入ったベルト。そう、五色そうめん株式会社のマスコットキャラクターの「ゴシキメン」だ。実は色が付いた麺が誕生して、6月9日で300年とされ、その節目を記念して作られたCMのワンシーンだ。「老舗」の看板に寄りかかることなく、新商品やPRに精を出す現場に潜入した。
(竹下世成)

■色麺誕生の鍵は椿神社!?

 

椿神社でのCMの撮影風景。右は友近さん、左はゴシキメン

 愛媛県民の「夏の食」と言っても過言ではない五色そうめん。その歴史は江戸時代の1635年に始まる。三重県の伊勢桑名藩から松平定行が初代松山藩主として国替えをした際に、ともに移り住んだ長門屋市兵衛が会社の原点とされる。

 そこから90年近くの年月を経た1722年に、5色の色麺が誕生した。その経緯には、こんな言い伝えがある。長門屋の子孫・市左衛門。彼の娘が椿神社を参った際に、5色の糸がげたに絡みついた。それに着想を得た娘が市左衛門に提案したのが色麺作り。試行錯誤を重ね、赤はベニハナ、黄色はクチナシ、濃紺はタカナ、緑はクチナシとタカナを使って、全国で初めてとされる色が付いたそうめんが生まれた。

 

色麺が誕生して300年。現在は梅やミカンなどで色を付けている

 1722年6月9日には、松山藩の参勤交代の献上品として、太刀や銀などとともに長門屋のそうめん1箱が渡されたとの記録が残る。この日を、五色そうめんでは「色麺誕生の日」としている。その後も、近松門左衛門の手紙や、江戸時代に歌われた伊予節の一節、そして「文月のものよ五色の糸そうめん」と正岡子規が詠んだように、長年にわたって五色そうめんは愛媛、全国で食されてきた。

 矢田義久社長は300年間も続く理由を推測を交えながら、こう答える。「他社がまねができない技術力があったんだろうと思います。あとは、『同じような色麺は作らない』という、他社のそうめん職人のプライドもあったのではないですかね」。今でこそ、同様の色麺を作る会社はあるが、元祖の自負をにじませる。

■変わりゆく環境、低迷する売り上げ

 

2015年に就任した矢田社長。計器会社の社長との二足のわらじを履く

 ただ、全てが順風満帆だったわけではない。同じ麺類でも、人気はパスタやラーメン、うどんに移り、そうめんの影が薄くなってきた。売り上げの多くを占めるギフト関係では、中元、歳暮といった贈答文化にもかつての活況はない。日持ちするそうめんは、食品が傷みやすい夏場の贈答品として用いられてきたが、物流や冷凍技術の発達で全国の名品・珍品を気軽に届けることができる。「ギフトでのシェアも低くなっています」。近年は、赤字が続いていた。

 そんな中で、2015年に創業家から全株式を取得したのが、新居浜市の原材料納入会社。五色そうめんと取引関係にあり、矢田さんが取締役を務めていた会社だった。周りは買収に反対の声しかなかったという。それでも、話を進めるように推したのは、自身が幼少期から知る老舗を残したいとの思い。そして、「万事塞翁が馬」という矢田さんの信念。「悪くてもよくなる兆候かも分からないし、逆もそう。一喜一憂せずにですね。ちょっと安易に考え過ぎてましたけど(笑)」

 社長就任後によく聞いた言葉がある。

 「五色そうめんを食べたけど、おいしくなかった」

 経営が厳しい中、以前の経営陣は懸命に会社を立て直そうとしたのだろう。「特に『出ずるを制する』ではないですが、出る金を非常に厳しく制限していました」。同じ経営者として理解できる部分がある半面、コストカットが商品の質の低下にもつながったとも感じていた。

■おいしい五色そうめんへ

 

子育て世代をターゲットにした商品や、色面誕生300年記念のパッケージ

 立て直しへ、まず手を付けたのが・・・

立て直しを図る矢田さん。さまざまな手を打つ中、生まれたのがゴシキメン。なぜ、戦隊物に走ったのか

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