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地軸

慈雨を

2018年8月17日(金)(愛媛新聞)

 雨の予報を聞くたび、不安になる。どうかこれ以上被害が出ませんように。でも、願わくは慈雨を。ミカンの木が水を欲しがっている▲

 先月の豪雨は、南予だけでなく県内各地のミカン山をズタズタにした。松山市高浜地区でも、えぐられるように山が崩落。水路は埋もれ、スプリンクラーも給水パイプも流され、へし折られた。水を運ぼうにもモノラックのレールは寸断され、手作業以外にすべがない▲

 それでもむき出しになった山肌の傍らで、イヨカンの木は生きている。農道の復旧や倒壊した倉庫の片付けに追われる間に、残された園地では雑草が勢いを増した▲

 農園主は、背中にジリジリと日差しを受けながら草を刈り続けている。急斜面にはいつくばり、足を踏ん張って鎌を振る。小さな緑の実には傷も見える。少しでも木に負担を掛けないようにと、絡まった草のつるを一つ一つ除く▲

 ヒグラシが秋の気配を連れてきた。これから摘果も防除も要る。復旧のめどは立たない。この冬どれだけ収穫できるかも分からない。「でも、とにかく木を持ちこたえさせないと」。農園主は黙々と作業を続けている▲

 ふと見ると、泥をかぶった木から柔らかな葉が生まれていた。かすかに爽やかなかんきつの香りがする。毎年当たり前に食べてきたミカン。その実一つに込められた思いの深さを知る。どうか慈雨を。生産者の心と明日を枯らさないよう、支援という「慈雨」も。

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