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1017日()

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地軸

アートと国難

2017年10月17日(火)(愛媛新聞)

 横浜で「見に行くことができない展覧会」を見た。装着した仮想現実(VR)機器に映し出されたのは、東京電力福島第1原発事故の帰還困難区域の、荒れ果てた街や防護服の人々▲

 3年に1度の国際現代美術展「ヨコハマトリエンナーレ」の一作品。映像には、美術家集団「Chim↑Pom」が企画、一昨年3月11日から実際に帰還困難区域内で「開催中」の展覧会の様子も。封鎖が解かれれば一般公開が始まるが、それがいつかは誰にも分からない▲

 「あれが原発。もう住めんね」「家に帰るのに、こんな息苦しい格好をしなきゃならん」。立ち退きを強いられた元住民の声が静かに響く。財産も暮らしも奪われた真の「国難」が、アートの中に在った。国難を理由にした衆院選で首相は、福島の第一声でも原発再稼働について、一言も語らなかったけれど▲

 トリエンナーレのテーマは「接続と孤立」。戦争、差別、忘却…。他の作品もいや応なく、世界の過酷な現実を投影する。忘れないために、共生の思いをつなぐために▲

 柳幸典さんの「アーティクル9」は、暗い部屋に真っ赤な電光文字で憲法9条の文言が流れる。「プロジェクト ゴジラ」は、水爆実験の日時などを記した鏡をたどった先に、人類への怒りに燃える「眼(め)」が▲

 中国出身の作家は、ギリシャに漂着した難民が使った救命胴衣800着を展示した。仮想ではない現実を胸に刻む想像力こそ、アートの力。

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