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社説

有機農業の拡大 消費者理解が推進に欠かせない

2021年6月25日(金)(愛媛新聞)

 農薬や化学肥料を使用しない「有機農業」という言葉が使われるようになったとされる1971年から50年。地球環境問題解決に向けた動きが世界で加速する中、政府が有機農業の推進に本腰を入れ始めた。有機農業のブームはこれまでに何度か到来しているが、いずれも限定的なものにとどまっており、今回の動きを確かな潮流としたい。

 

 政府は5月、2050年までに有機農業の面積を全耕地の25%に当たる100万ヘクタールに増やすと掲げた。18年度の2万3700ヘクタールから飛躍的に拡大させる野心的な数値目標だ。50年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現などに向けた「みどりの食料システム戦略」に盛り込み、生産力の向上と持続性の両立を技術革新で実現するとしている。

 

 だが、その道のりは険しい。農林水産省によると、国内では09~18年に有機農業に取り組む面積は45%増加したが、欧米に比べて大きく見劣りする。世界有数の農産物輸出国の米国やフランスは200万ヘクタールを超え、有機農業大国といわれるイタリアも日本より国土が小さいながら約200万ヘクタールある。日本は温暖で雑草や病害虫が発生しやすいという気候のハンディがあるとはいえ、有機農業への取り組みが大きく出遅れていると言わざるを得ない。

 

 数値目標の実現には農薬や化学肥料を慣行レベルの50%以上削減した「特別栽培農産物」の生産者や、双方の使用を減らす技術の導入に取り組む「エコファーマー」に、有機農業へ移行してもらう必要がある。そのためには、生産者の多くが取り入れやすい持続可能な栽培技術を確立することが欠かせない。

 

 まずは、効率的な施肥を推進するべきだ。スマートフォンを活用した簡易土壌分析を導入して作物に最適な施肥を実現し、無駄な肥料や不要な作業を減らす。得られたデータは位置情報を合わせて蓄積・共有することで各生産者が試行錯誤する糸口とする。有機農業熟練者の技術や堆肥への置き換えも加味できれば、より高度化できる。農薬の削減は病害虫に強い品種の開発や農薬に頼らない防除などを組み合わせることで、段階的に底上げを図っていきたい。

 

 地域レベルの支援体制も重要となる。イタリアは地方自治体が有機農業の推進に積極的だったことが奏功したという。愛媛県は有機農業に取り組む面積と農業者を19年度の491ヘクタール、992人から30年度に830ヘクタール以上、1700人とする目標を掲げている。各種補助事業を活用した支援を想定しているが、農水省は研究開発も含め、十分に地方を後押ししてほしい。

 

 有機農業の推進で最も大切なのは消費者の理解だ。農産物の見栄えを重視するあまり、生産者も農薬に頼ってしまう構造ができた。画餅に終わらせぬよう生産者や行政だけでなく、消費者も一体で取り組む体制を国が先頭に立ってつくるべきだ。

 

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