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社説

玄海原発再稼働同意 住民不安置き去りの拙速判断だ

2017年4月26日(水)(愛媛新聞)

 佐賀県の山口祥義知事が、九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に同意した。玄海町長は既に同意しており、これで「地元同意」の手続きが完了したとされ、事実上再稼働が決まった。

 しかし原発の安全性や避難計画を不安視する周辺市長らは反対している。異論に向き合おうとしない拙速な判断に異を唱えたい。東京電力福島第1原発事故は6年たっても収束のめどが立たず、国民の多くは再稼働に否定的だ。にもかかわらず新規制基準の下での地元同意は四国電力伊方原発などに続き4例目となった。なし崩し的に原発回帰が進む現状を深く憂慮する。

 山口氏は「現状ではやむを得ない」と説明した。県民の理解が前提として、経済や医療など各団体の代表者でつくる委員会を設けて意見を聞き、手順を踏んできたようにはみえる。だが県民から「アリバイづくりだ」と批判されたのは、山口氏が電力の安定供給に原発が必要との立場を一貫して崩さなかったからだ。原発が全て止まっている間も、大規模な停電もなく乗り切っており、説得力に欠ける。

 被害が県境を越え広範囲に及んだ福島の事故を振り返れば、立地自治体の同意だけでいいのか疑問だ。重大事故時に避難が必要となる原発の半径30㌔圏内には佐賀、福岡、長崎3県の7市1町があり、このうち長崎県平戸、松浦、壱岐市と佐賀県伊万里市の4市長が反対を表明した。住民が被ばくせずに逃げることができるのかという危惧が理由だ。立地自治体以外から懸念の声が上がるのは十分に理解できる。

 特に玄界灘に浮かぶ大小20ほどの離島の避難ルートは実効性に乏しい。人口2万6千人の壱岐島では30㌔圏内の南部の住民は北部へ移動する計画だが、風向きによっては逃げ場がなくなる。他の島は船などを使って島外へ逃げる想定だが、荒天だと困難になる。国や電力会社は同意の範囲を広げると再稼働の支障になるとみているのだろう。だが周辺住民の不安を置き去りにしていいわけはない。再稼働同意の対象を広げ、住民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 玄海原発を巡っては、九電が事故時の対策拠点となる免震重要棟の建設を白紙撤回した経緯がある。免震棟は福島の事故でも有効性が確認された。その教訓を生かさず、耐震施設へ切り替えたことに、山口氏は「信頼関係を築くためにも、自らやると言ったことはやるべきだ」と苦言を呈していたはず。九電の安全性確保に取り組む姿勢への疑念は解消されていない。

 国が2014年に定めたエネルギー基本計画では「原発依存度を可能な限り低減する」としている。だが国や電力会社にその姿勢がうかがえず、国民との溝は広がる一方だ。太陽光など再生可能エネルギーの導入が各地で進んでいる。福島の事故時の反省に立ち返り、脱原発にどう道筋を付けるかの議論こそ急ぐ必要がある。

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