ログイン
Myページ
Myページ

愛媛新聞ONLINE

2019
426日()

ログイン
Myページ
愛顔会員Myページ
MENU

社説

強制不妊救済法成立 尊厳回復への第一歩にすぎない

2019年4月26日(金)(愛媛新聞)

 旧優生保護法下で不妊手術を強いられた障害者らに一時金320万円を支給する救済法が成立した。障害者差別に当たるとして手術の規定が廃止されてから20年余り。遅きに失した国の救済がようやく始まる。

 しかし、救済法は強制不妊手術を推し進めた国の責任を明確にしておらず、一時金の額や周知方法も被害者の求めるものとは大きな隔たりがある。被害者は「納得できない」と各地裁で起こした国家賠償請求訴訟を継続する構えだ。真の解決にはまだ遠く、救済法成立は償いの第一歩にすぎない。国は救済の実効性を担保する法改正を含め、被害者の尊厳回復に一層の努力を尽くす責務がある。

 救済法は被害者への「反省とおわび」を前文に明記し、安倍晋三首相も同様の談話を発表した。だが、国の法的責任には触れず、「当時は適法だった」との姿勢を崩していない。

 救済法の主語も「われわれ」と玉虫色の表現にしたが、非人道的な差別が繰り返された責任の所在を曖昧にすることは許されない。救済責任が国にあることは明白であり、主語を「国」に改めるべきだ。

 一時金の額については被害者の長年の苦しみに見合っているのか疑問だ。国賠訴訟の請求額は最大3千万円台で、それと比べても大きな差がある。一時金は、日本と同様に強制不妊政策があったスウェーデンの例にならったが、同国が支払いを開始したのは1999年から。20年も謝罪や補償が遅れた日本とは事情が異なり、算定根拠としては納得し難い。

 救済制度の周知方法でも被害者の要求は十分に反映されなかった。国の統計では約2万5千人が不妊手術を受けたが、裏付ける個人記録は約3千人分しかない。被害者側は一時金の請求を促すため、この3千人への個別通知を求めていたが、国はプライバシーが漏れる恐れがあるとして見送った。

 本人が高齢だったり、知的障害があったりして制度を十分把握できない人は多い。それにもかかわらず、本人に通知することなく一時金の支給を請求するよう求めることは、最初から全員の救済を放棄しているのに等しい。鳥取県は「国のやり方は本当の救済につながるのか」と疑問を呈し、プライバシーに配慮した個別通知の仕組みを整えると表明した。国は都道府県まかせにするのではなく、周知の強化や支給方法の改善に率先して知恵を絞るべきだ。

 安倍首相は談話で、病気や障害で差別されることがない共生社会の実現に向け、「政府として最大限の努力を尽くす」と約束した。救済法には差別を繰り返さないために、問題の経緯を調査することが盛り込まれた。個人の尊厳を踏みにじる優生思想を社会から根絶しなければならない。そのためにも過去の過ちを徹底的に検証し、引き出された教訓を生かすことが不可欠である。

    過去の社説一覧へ

    ※社説・地軸は、未ログインの方は当日分、アクリートくらぶWEB会員は7日分、読者会員は制限なしでご覧いただけます。

    おすすめ記事

    <プレスリリース>一覧

    愛媛の主要ニュース

    トップ10ニュース

    愛媛の情報なら、愛媛新聞のアプリ。

    欲しい情報をいつでもあなたにお届け!プッシュ通知機能も充実。