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社説

文化財保護法改正へ 拙速な「規制緩和」に危惧が募る

2017年8月17日(木)(愛媛新聞)

 歴史的な建物や史跡を生かした地域振興の促進へ、文化庁は文化財保護法を大幅に改める方針を決めた。国指定文化財について、改修などの現状変更を許可する権限を文化庁長官から市町村長に移譲する。1950年に法制定して以来の大転換だ。

 文化財はその土地の歴史や文化を伝えるかけがえのない宝であり、住民の誇りとなる社会資産。重要文化財や史跡・名勝・天然記念物を守るため、法は厳しい制約を課してきた。国の指導に従ってきた自治体側には適正な判断ができる環境が整っているとは言い難く、「開発」への歯止めをなくしかねない。

 長く守られてきた文化財も一度壊されれば元に戻すことは極めて難しい。価値を失ってしまっては本末転倒。拙速な変更で貴重な宝を使い捨てすることがないよう、慎重の上にも慎重を期した議論を求めたい。

 権限移譲すれば、文化財を結婚式場や宿泊施設として使うための改修などが市町村の判断でできるようになる。市町村が観光団体や所有者らと協議会をつくって保護・活用に関する基本計画を作成し、国に認定されれば補助金や税制優遇で後押しされるという。

 だが、文化財にどこまで手を加えてよいのか判断は難しい。これまで改修には、知識と経験を有する文化庁承認の専門技術者が設計監理に当たってきた。地方行政には、専門的な知見を持つ人材も、文化財を守り活用するための組織も不十分。いきなりの権限移譲には市町村からも困惑の声が上がっている。

 こうした状況にもかかわらず文化庁は来年の通常国会に改正案を提出し、来年中の施行を目指すという。国主導による自治体の専門職員育成や、調査や検証の仕組みづくりなど体制整備が先決であり、それらを抜きにした無責任な「規制緩和」は認められない。

 急ぐ背景には政府の観光立国戦略がある。外国人客誘致が促される中、文化庁は東京五輪を見据えた文化財活用の必要性をうたい、観光業者参画に期待を寄せる。近年、民間団体などから、まちのにぎわい創出へ活用を求める声が高まっており、弾みをつけたい意図が透ける。だが、目先の収益に目を奪われてはならない。経済効果で価値を測るなら、利用価値が低いとみなされた文化財は保護が軽んじられる恐れさえ出てくる。

 しっかりとした学術調査の上に、価値や魅力を広く深く伝えることで、守り手を育てる―。活用の本来の精神を、改めて胸に刻まなければならない。

 少子高齢化や過疎化によって文化財の維持管理や継承は今後一層厳しさを増す。重要文化財の道後温泉や内子座を見れば分かるように、大切に使い続けることで宝は生き、人々に愛されてこそ守られる。文化財の重要性の認識をどう共有し、保護継承策を打ち出すか。これを契機に地域ぐるみで議論を深め、共有財産を未来へつなぎたい。

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