愛媛新聞ONLINE

2022
122日()

新聞購読
新規登録
メニュー

社説

皇位継承策 危機直視せぬ先送りを危惧する

2022年1月22日(土)(愛媛新聞)

 皇室の危機から目を背けたと言わざるを得ない。

 

 安定的な皇位継承策についての政府案を、岸田文雄首相が衆参両院議長に報告した。女性・女系天皇の是非など、皇位継承の核心に触れる部分は将来の議論に委ね、先送りした格好だ。

 

 報告は、専ら皇族数確保策に重点が置かれ、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する▽皇族の養子縁組を可能とし、皇統に属する旧宮家の男系男子を皇族とする―の2案を示した。

 

 天皇退位特例法に伴い、2017年に国会が採択した付帯決議は、女性宮家創設などの重要課題を検討して報告するよう政府に要請していた。論点のすり替えとの批判は免れまい。

 

 さらに政府報告とは名ばかりで、内容は有識者会議の答申そのもの。決議は政府に主体的検討も求めていたが、改めて検討した形跡はうかがえない。要請に応えぬ国会軽視の姿勢を、首相は猛省してもらいたい。

 

 衆参両院は今週、各党派を集めて全体会議を開いた。与野党協議が本格始動したが、溝は深い。自民党が政府報告を評価する一方、立憲民主党などは先送りを強く批判する。

 

 自民は早速、皇族数確保策に絞る考えを示した。男系維持を主張する党内保守派などを意識し、女性・女系天皇容認につながる議論を避けたい思惑が透ける。決議には自民も名を連ねたはずだ。女性宮家創設についても、議論に応じる責任がある。「行司役」を担う両院議長のリーダーシップ発揮も求めたい。

 

 有識者会議には失望を禁じ得ない。当初は排除していなかった継承策は、途中で消えた。専門家からの聴取で、女性天皇を容認する意見が多く集まったことが背景にある。議論を深めることで、すでに確保されている皇位継承を揺るがしては本末転倒との理由からだという。

 

 次世代の継承者は秋篠宮さまの長男悠仁さましかいない。現状を放置すれば、悠仁さまに将来、男子誕生を望む多大な重圧がかかる懸念もある。国論を二分する可能性があるのは確かだが、いつまでも議論自体をタブー視していてはなるまい。

 

 皇族数の確保策にも問題点が潜む。政府報告によれば、女性皇族には婚姻後の皇籍維持を拒む自由がない。維持したとしても、その配偶者と子どもは皇族としないことが考えられるとする。また、旧宮家の若い男系男子がどの程度いるのか、養子縁組の意思があるのかなどの情報は、国民には届いていない。

 

 旧宮家は室町時代の約600年前に天皇家から分かれた。国民になじみも薄く、支持や理解を得るのは容易ではなかろう。

 

 上皇さまが、天皇退位の意向とともに象徴天皇制存続の危機感を訴えられてから、5年以上がたつ。課題を先送りした政府報告にどう向き合うのか、国会は存在意義が問われていると肝に銘じるべきだ。同時に、国民一人一人が皇室の将来を考える契機としなければならない。

 

    過去の社説一覧へ

    ※社説・地軸は、未ログインの方は当日分、アクリートくらぶWEB会員は7日分、読者会員は3年分をご覧いただけます。

    おすすめ記事

    <プレスリリース>一覧

    愛媛の主要ニュース

    トップ10ニュース

    愛媛の情報なら、愛媛新聞のアプリ。

    欲しい情報をいつでもあなたにお届け!プッシュ通知機能も充実。