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社説

大川小の教訓 災害に強い学校へ最大限の力を

2019年10月18日(金)(愛媛新聞)

 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小の児童23人の遺族が、市と県に損害賠償を求めた訴訟で、原告側の勝訴が確定した。最高裁が、災害発生前の防災対策の不備で児童を避難させることができなかった過失を厳格に判断した仙台高裁判決を支持した。

 学校にいる間、児童は教員の指示に自身の安全を委ねるしかない。最高裁の決定は教育現場や行政に対し、いかなる非常時でも子どもの命を守る責務があるとの自覚を強く促した形だ。全ての関係者が真摯(しんし)に受け止め災害に強い学校へ最大限力を尽くしていかなければならない。

 震災当日、大川小の児童108人のうち70人が死亡、4人が行方不明となり、教職員10人が死亡した。地震発生後、児童は教員らの指示で校庭に40分以上とどまり、避難を始めた直後に津波に巻き込まれた。

 一審判決は地震発生後、現場の教員が児童を適切に避難させなかったとして学校側の過失を認定したが、事前の防災体制の不備は認めなかった。ところが二審判決では防災体制の不備を全面的に認め、学校と市教育委員会の組織的過失も断じた。

 当時のハザードマップでは大川小は津波の浸水予想区域の外だったが、二審判決は北上川の近くに立地する学校の実情を踏まえ、津波の危険は予見できたと言及。学校の危機管理マニュアルの避難先が「近隣の空き地・公園など」と漠然と記されたままで、具体的に安全な場所を指定していなかった点を、前もって児童の安全を守るべき義務を怠っていたと判断した。事情を把握すべき市教委が不備を指導しなかったことも批判した。

 高いレベルで安全対策を求められる結果に学校現場の不安が尽きないのは確かだろう。だが前例踏襲や漫然とした対応では大災害に直面した際に子どもの命は守りきれない。マニュアルや訓練は想定外が起こり得ることを念頭に、適切な見直しを重ねてこそ役に立つ。学校の防災への真剣な姿勢も子どもの生きる力を高めるはずだ。あの日、岩手県釜石市の小中学生が高台へ自主的に避難して津波被害を免れた事例を思い返したい。

 もちろん、学校での安全を現場に全て委ねることがあってはならない。多忙な教員がさらに対応に追われ、子どもへの目配りがおろそかになっては本末転倒だ。行政はサポートを強め、保護者や地域住民も連携を深める。そんな社会全体で学校を支える取り組みが欠かせない。国は教職員の防災研修の充実化へ必要な体制を整えるべきだ。

 今回も台風19号で各地に甚大な被害が出た。昨年は西日本豪雨災害が起き、毎年のように未曽有の風水害が発生している。南海トラフ巨大地震も懸念される。児童を率いて命懸けの避難に迫られる日は今日かもしれない。「救えた命だった」と今も悔やむ児童の遺族の言葉を、わが事としてかみしめたい。大川小の悲劇を繰り返さぬように。

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