読者の写真 2010年 年間賞
年間賞決定 最優秀賞に武井さん
第3回「読者の写真・年間賞」の審査がこのほどあり、最優秀賞に松山市、会社員武井寛喜さん(58)の作品「しめかざり作り」(1月分1席)を選んだ。また、武井さんの妻美智子さん(55)は2年連続の優秀賞を獲得。夫婦そろっての受賞となった。
年間応募総数がことしも増加し、昨年を473点上回る3550点となった。特に5月は362点で月間最多記録も更新した。
審査では、ことしの1席12点から最優秀賞を1点。優秀賞は「敗者復活」の意味を込め、各月の審査で「上位入賞作とテーマが同じ」などの理由で惜しくも選外となった秀作から4点を選考した。
受賞者には賞状と額入りの受賞作品を授与。副賞として最優秀賞に3万円、優秀賞に1万円を贈る。
優秀賞は次の皆さん。
武井美智子(松山市)中岡清秀(松山市)浅倉忠則(内子町)木下常雄(松山市)。
上位受賞作品と年間賞候補など計55点は、来年1月12日から21日まで(午前9時~午後5時、土日は午前11時~午後5時)、愛媛新聞社1階ロビーで展示する。来場は公共交通機関で。入場無料。
◇過去の入賞作品は愛媛新聞ONLINEの「アクリートくらぶ」会員専用サイトで閲覧できます。
(審査評は映像報道部副部長・村上健二)
- *写真転用は厳禁です
最優秀賞
「しめかざり作り」
武井寛喜 松山市
審査したことしの1席12点には、最優秀に選ばれた武井寛喜さんのほか、浅倉忠則さん4点、塩崎辰蔵さん2点など、1席を複数回獲得したベテランの作品が目立ちました。レベルが高く拮抗(きっこう)した秀作ぞろいで票が分かれ、決選投票の末、武井さんの「しめかざり作り」(1月分)に決定。1月の審査評で紹介した通り、日本の伝統文化を伝える“重み”のような雰囲気をローキー調に仕上げる狙いに成功しています。手先の躍動感や背景のまとめ方なども加味した総合評価で判断しました。
スローシャッターで躍動感 夫婦で撮ると競争心わく
最優秀に輝いた武井寛喜さん宅を訪ね、受賞の喜びや写真活動について聞いた。

受賞の感想は。
武井 昨年、妻の優秀賞で喜んだが、私もいつかは欲しいと思った。それが現実となり、本当にうれしい。
受賞作の苦労やエピソードは。
武井 夫婦で早朝、内子町の参川地区の風景を狙いに行ったが、イメージがわかないまま車を走らせた。太森神社の看板が目に入り、妻の「行ってみよう」の一声で向かうと、お年寄りらが境内でしめ縄作りを始めるところ。1人の女性が縄を編み始めたのでチャンスだと思った。
声を掛けると「こんな年寄りを撮っても、シワが見え恥ずかしいから駄目だよ。化粧もしてないし」と言われた。「シルエットにすればシワは見えないしきれいに撮るよ」と説得、了解を得てシャッターを切った。背景をぼかし、伝統を守るひたむきさや、手の動きを重点に撮ろうと思い、スローシャッターで躍動感を狙った。
カメラの機種は。
武井 フィルムカメラはニコンF90にレンズ70―300。デジタルカメラはニコンD80にレンズ16―85で使い分け、風景写真は広角を使う。
写真の魅力は。
武井 イメージ通り仕上がったときがうれしい。最近は風景狙いが多いが、同じ場所でも時間や季節で別の顔をする。妻と同じように撮っても、構図の違いなどで同じ作品にはならない。夫婦で写真を撮るといろんな面で勉強になるし、競争心がわいてくる。
写真を好きになったきっかけは。
武井 約20年前、会社の同僚に写真好きがいて、誘われてモデル撮影会に行くようになった。初めてコンテストに出品したのが、なんと入賞。それから現在まで、百数十回もモデル撮影会に行った。
日々の写真活動や今後の目標は。
武井 妻と休みがあえば、いつも出掛けるようにしている。そしていつかは夫婦で写真展を開きたい。
優秀賞
1席と競り合いながらも選外となった力作など、年間賞候補として残ったのは19点。その中から4点を選びました。
「お城の舞」
中岡清秀 松山市
中岡清秀さんの「お城の舞」(10月分)。観月祭で楽しそうに踊る参加者。濃度差が激しく露出が難しいシーンですが、舞台や城がくっきりシャープに再現されています。楽しそうに踊っている女の子が、場を盛り上げていたそうです。その雰囲気まで写されていますね。昨年の覇者中岡さんは、今年もアクティブに活動、たくさんのシーンを送ってくれました。
「稔る頃」
浅倉忠則 内子町
浅倉忠則さんの「稔(みの)る頃」(10月分)。スズメが稲穂をくわえ元気に羽ばたくポーズにぴったりの画題です。背景の緑も映えて絵になっていますね。300ミリレンズでシャッター500分の1、F2・8。ブレのないクリアな作品が多い浅倉さんは、いつも詳しい状況説明を添えてくれるので楽しみにしています。初回から3連続の優秀賞。
「春」
武井美智子 松山市
武井美智子さんの「春」(5月分)。新居浜の瑞応寺で、真っ盛りの春を格子越しに狙った作品。桜は分かりにくくなっていますが、個性あるフレーミングです。格子のラインが目に留まりインパクトがあります。アンダー気味に撮影したのも効果的。この場にも夫婦で撮影に行ったとか。これからもよきライバルの夫に負けない写真を撮ってくださいね。
「夜明け前(月輪)」
木下常雄 松山市
木下常雄さんの「夜明け前(月輪)」(3月分)。厳冬の日の出前、天狗岳の右上に光る月輪が美しく輝いています。人があまり狙わないものを撮影するという木下さん。度々足を運ばないとお目にかかれないシーンですね。満月のように見えますが、実際は半月だったそうです。難しい露出をベストショット。ニコンD3で広角15ミリF2・8、ISO3200の9秒。
- *優秀賞・努力賞は受賞者の代表作を掲載しています。